DEATH STRANDING/作品レビュー
お久しぶりです。Supersonicです。
案の定緊急事態宣言が延長された昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。
かくいう自分は家でPS4やるのが9割になっております。家でできることって限られますよね。
しかし自粛が続くこの最中、人との繋がりは乏しくなり、それで身も心も疲弊してきたという方も多いかと思われます。
自分は一人でも結構大丈夫な方なんですが、流石に一ヶ月となると厳しいものがあります。
「せっかくゲームが好きなんだから不特定多数の人とオンラインで楽しもう!」みたいなのも、どことなく苦手意識があります。
実際自分はPS4のフレンド申請やメッセージといった全ての対人要素をオフにしてプレイしているという有様です。助けてクレメンス…
というわけで今回は、自分のような「他人と積極的に関わるのは苦手だけど完全なスタンドアローン(オフライン)は嫌だ」という人々の希望に完璧に沿ってくれた稀代の怪作ゲーム、
DEATH STRANDINGをご紹介します。
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP9000-CUSA12612_00-DEATHSTRAND00001
☆作品概要
昨年PS4で発表された小島秀夫監督の最新作。Steamでも配信予定。メタルギアシリーズを手掛けた氏が独立開業した「コジマ・プロダクション」の、記念すべき第一作目です。
あまりにも斬新かつ奇抜なゲームデザインのため発表直後から賛否が真っ二つに割れた作品です。
ここで取り上げておいてなんですが、私も「これ面白いからぜひやってみて!」と軽率に言えないのが本音だったりします。なんなんだこいつ…
というのもこのゲーム、何を隠そう今まであまり類を見ない
「配送ゲー」であり、依頼主から頼まれた荷物を大切に管理しながら道無き道を往くというのが主な内容なのです。
端的にいうと物資を歩いて大切に運ぶゲームであり、戦闘などの要素もありながら、それらはなるべく回避することが推奨されています。以下に詳細を綴っていきますので、購入を判断する際の一助となれば幸いです。
☆世界観とストーリー
舞台は近未来のアメリカ。「デス・ストランディング」という未曾有の大災害により、生者と死者の世界が繋がってしまった世界で物語は繰り広げられます。
「死の座礁」を意味するこの現象は世界秩序を大きく揺るがし、人々はその脅威(後述 )を避けるため、各々シェルターへ籠ることを余儀なくされていました。
インフラがことごとく破壊されたそのアメリカでは「ポーター」と呼ばれる人々が道無き道を歩んで物資の配達を担っており、プレイヤーはそのうちの一人である伝説の配達人、「サム・ポーター」となって、配送がてらアメリカの国家機能を回復させていくことになります。
☆「移動」のゲーム化
さてさて、昨今のゲームジャンルのメジャーの一端である「オープンワールド」。「どこにいくのも自由、何をするのも自由」がウリの作風ですが、このジャンルには一つ弱点があります。
それは「移動」です。マップが広い分、目的地に着くまでアイテムを管理しながら長ーい道のりを行かねばならないのです。
これに属するジャンルのゲームは、例えば乗り物を用意したり、一度訪れた場所であればロードを挟んで即移動する「ファストトラベル」といったシステムを搭載したり、道中にランダムイベントを組み込むなどの工夫がなされています。
裏を返せば、この「移動」パートはそれだけ工夫を要する、ないしは省略することが前提となっている要素なのです。
このデス・ストランディングもまた、オープンワールド系のゲームです。しかし、このゲームが賛否を巻き起こし、また、大いに支持された理由。
それは、「移動」それ自体がゲームとして遊べるように設計されているところにあります。
さてさて、このゲームの具体的なシステムを紹介していきましょう。
このゲームの目的は、様々な人々から配送依頼を受けて荷物を無事配送先まで届けることです。
まずは依頼主から配送依頼を受け、重量を吟味しながらアイテムやサポートギアを見繕います。歩くのに不可欠なブーツや、怪我をした時のための輸血用の血液、そして護身用の武器など。
ゲームを進めると上図のように乗り物も利用可能になりますが、基本的に道無き道を行くので走破性はあまり期待できません。
どちらかというと「梯子」や高い場所から安全に降りるための「ロープパイル」など原始的な器具が有用になります。
これらの道具には全て重量が設定されており、重いとサム(主人公)の負担になって運動性が落ちるので、たくさん持っていけば良いというわけではありません。
準備ができたらいざ出動。道無き道を歩いていきます。
まず驚くべきは操作性。意外にも大きなストレスはなく、すぐに慣れることができます。荷物の積載量で操作感そのものが変わってしまうにもかかわらず、モーションの不自然さや嫌味なプレイフィールはほとんど感じません。
さて次に、このゲーム一番すごいところ。なんとフィールドのテクスチャ全てに「転倒判定」が施されています。
どういう意味かというと、例えば荷物をたくさん背負った状態で走るとバランスが崩れ、最悪転倒して自分や荷物にダメージが入るのですが、それは平坦な草っ原などではあまり起きません。
しかし、地面のちょっとした突起であったり、ゴツゴツした悪路だったりぬかるみで下手に走ったりすると、転倒の危険性が飛躍的に高まるということです。
水深の深い川に考えなしに突っ込むとどエラいことになります。
このあたりの要素を「斬新」とみなすか「面倒」と見なすか。それが、上記で述べた賛否が真っ二つに分かれる部分の正体です。
☆相棒と泥棒とお化け
配送の障壁になるのは悪路だけではありません。ミュールと呼ばれる盗賊集団が各地にテリトリーを作っており、彼らのセンサーに引っかかると一丸となって荷物を奪いにきます。
彼らはもともとサムと同じ「ポーター」だった人々なのですが、
「世界を物流によって繋ぐ使命感と人々から感謝される快感により配達依存症を発症し、そのうちに正気をなくして荷物だけを奪いに来るような暴力性だけが残ってしまった」人々
だったりします。
何を言ってるのかわからないと思いますが、まぁアレですよ。SNSでバズるために手段を選ばなくなった人とかいるじゃないですか。アレと同じ感じだと思います。
過ぎたるはなおってやつですね。
まぁこのミュールは所詮人間。護身用武器やサムの格闘術で比較的簡単にいなすことができます。油断はできませんが。慣れれば下の図のように彼らのトラックを奪取して物資を根こそぎいただく芸当も可能です。
もうどっちが野盗かわかんねぇな。
☆本当に恐ろしい者たち
この世界に降る「雨」。これは「時雨(ときう、タイムフォール)」と呼ばれ、触れた物質の時間を急速に奪い去る=経年劣化させる、特殊かつ非常に危険な性質を持っています。要するに荷物が継続的にダメージを受け続けるのです。地面も濡れるので転倒の危険性も高まります。
ゆえに長期間その時雨が降るエリアに止まるのは非常に悪手であり、迅速に抜け出すことが肝要…ではあるのですが、それは問屋が卸してくれません。
この時雨の本当の恐怖。それはデス・ストランディングにより生者の世界に現出した、この世とあの世の狭間に座礁した者たち、BTの存在です。
時雨の中を移動するさなか、上図のBBと連動した「オドラデク」という便利センサーが作動し、雷の音とおもにおどろおどろしい演出が入ります。
BBは情緒不安定になり、「何か」に怯えるようになります。
その「何か」が、他ならぬこのBTなのです。
時雨の激しく降る場所ではこのBTが宙を漂っており、普段は人型で盲目の状態にあります。
彼らは「この世」のものを「見る」ことはできませんが「聴く」ことはでき、足音はもちろん、呼吸音まで鋭く感知し、対象の位置を特定すると地面に手を這わせて近づいてきます。
しゃがんで足音を消す、ボタンを押し続けて呼吸を止める(スタミナを消費します)ことで彼らの感知を回避できますが、一度捕まると無数の人影がサム羽交い締め、そこから脱出できないと「異形」との戦闘状態になります。
BTの攻略にはサム自身の血を使う必要があるなど、一匹の異形に対応するためには膨大なリソースと時間(荷物がダメージを受け続ける)が必要になります。
ゆえに彼らとの解決は最も優先して回避すべき事柄であり、それはゲーム中でも繰り返し述べられます。もしこの状態で致命的なダメージを受けると…。
それほど危険な存在です。
☆革新的オンラインシステム「カイラル通信」
さてさて上記までの紹介で、「なんだ。やっぱりソロゲーじゃないか」とか、「めっちゃ地味やん」とか「BT怖いホラー無理」という言葉が出てきそうですが、もう一度冒頭の言葉を引っ張ってきます。
「他人と積極的に関わるのは苦手だけど完全なスタンドアローン(オフライン)は嫌だ」
ここからがこのゲームの真髄。他のプレイヤーと間接的に、しかし密に関わることができるオンラインシステム、「カイラル通信」についてご紹介します。
このゲームの各施設には「配送端末」があり、物資の配送がてらQpidという特殊なデバイスをこれに接続して各地のネットワーク機能を回復させていきます。
これを完了すると、物質の転送(量子テレポート)すら可能になるほどの高性能な通信システムが回復します。これがカイラル通信です。
するとなんということでしょう。
他のプレイヤーたちが作ってくれたサポート装置や、乗り物、放棄されたアイテムなどが自分のフィールドに同期され、それらを自由に利用することができるのです。
このゲームのアイテムの一つに「建設装置」というものがあります。これは、ギアを使用するためのバッテリーを回復させる「発電機」や、河川や崖を簡単に渡れるようにするための「橋の土台」を作るための装置です。
例えばプレイヤーA氏が「ここに橋があったらいいかな」と考えてその土台を作るとします。それがプレイヤーB氏とC氏に同期され、両氏が「なるほど!ここに橋があると確かに便利だな!」と賛同し、素材を提供して橋が完成します。
そしてその完成した橋が自分のフィールドに同期されると、来る時はかなりの手間を割いて通過しなければいけなかったルートをあっさり通過できたりするわけです。
こうなると橋を建造してくれた三名に感謝を送りたくなります。そこで、他のプレイヤーが作ったり乗り捨てたりした各々の装置や乗り物には、SNSよろしく「いいね!」を送りまくることができるのです。
無論、自分が作ったものが他のプレイヤーのフィールドに同期され、「いいね!」をもらえることもあります。
バッテリーが切れてギアの性能が枯渇した時に乗り捨てられたバイクがあったりすると安心と感謝のあまり涙が出そうにすらなります。
また、コントローラーのタッチパッドを押すとサムが「俺はサムだ!」とか「俺はここだ!」とか叫び出すのですが、他のプレイヤーが同じエリアで同じように叫んでいると「俺もサムだ!」とか「お前はどこだ⁉︎」と返ってくる小ネタもあります。
なので、一人でプレイしてるはずがいつの間にか他のプレイヤーと協力し、互いにサポートしながら楽しめるようになっているのです。
また、このカイラル通信はストーリーとも非常に深く関わってくる要素でもあり、「作り込んだ設定がそのままゲームシステムとしてきちんと機能している」という、メタ的な秀逸さもあります。
☆総評
あまりにも斬新な切り口と序盤の意図的な不便利さが相まって「受け付けられない」という方々も多い一方、優れたデザインセンスとそれを活かす美麗なグラフィック、何よりもアイデアとシステムの優れた相互親和に惹かれ、多くのファンを獲得するに至った作品です。
ノーマン・リーダスをはじめとする大物俳優が起用された格キャラクターがフィーチャーされがちですが、実際にやってみると新規IPとは思えないほどの丁寧な作りに驚くことでしょう。
一言で言うなれば、「本来『面倒くさい』だけだったゲームの一部を、奇想怪想により見事『遊び』へと仕立て上げてしまった世紀の怪作」です。
少し難点と注意点を記すなら、チュートリアルやUIデザインなどのユーザビリティの吟味が少し甘いこと、「敵を倒すことが目的の設計ではない」ゲームデザイン、めちゃくちゃクセのあるストーリーテリングが、人を選ぶという点です。
しかし少なくとも自分は大いに楽しむことができました。というか今現在、ハードモードで絶賛2周目プレイ中です。
気にいるか気に入らないかは若干「賭け」になりますが、非常に価値のある作品であると、自分は考えています。
Definitely Maybe(Oasis)/作品レビュー
こんにちは。Supersonicです。天気は良さげなのに満足に外にも出れない今このころ。歯痒いですよね。
歯痒いといえば私のニックネーム、"Supersonic"。
発音してみましょうか。
「スーパーソニック」。
…どことなくニックネームとしては歯痒い気がします。
しかしこれ、実はちゃんとした由来があるんですよね。適当につけたわけではないです。
さてさて、今回は私のニックネームの由来になった楽曲、"Supersonic"にてデビューを飾ったイギリスはマンチェスターのロックン・ロールバンド、"Oasis"の1stアルバム、"Definitely Maybe"をご紹介していきたいと思います。
普段洋楽を聴かない方にもなるべく分かりやすいように書いていくつもりです。
まずは件の曲を聞いてみましょう。
"Supersonic"
「…誰?」
って声が聞こえてきそうなんで、以下の三つのどれかを聞いてみてください。多分ピンとくるはずです。
"Whatever"(シングル)
"Don't Look Back In Anger"(2ndアルバム、"(What's the story?)Morning Glory"に収録)
"Wonderwall"(同上)
おそらく、上記のいずれかを聴いてもらえれば「ああ!この人たちか!」となっていただけると思います。
Oasisはイギリスを代表するロックバンドの一つであり、日本でも絶大な人気を誇っています。
端的に表現するならめちゃくちゃクオリティの高い「普通に良い曲」を作りまくったバンドです。
さて、上の三曲を聴いて「あれ?なんかボーカルの声違くない?」と思われた方もいらっしゃると思います。
それもそのはず、このOasisはソングライター兼ギターボーカルのノエル・ギャラガー、メインボーカルのリアム・ギャラガーを2トップとする「兄弟バンド」なのです。
現在バンドは解散して、この二人は各々ソロで活動しています。
私が高校生の頃に「ハマった瞬間に解散した」のは今では良い思い出です。
☆作品概要
Definitely Maybe(「確実に、おそらく」の意)は1994年に発売されたOasisのデビューアルバムです。
後に発表された彼らの代名詞である2ndアルバム、"(What's the story?)Morning Glory"に比べるとややあら削りでノイジーな色が強い作品になっています。
しかししかしこの頃から彼らはもう十分に頭角を表しており、今でも「定番」とされている曲が数多く収録されています。
既にOasisのファンである方は「なんでこいつ2ndから紹介しねぇんだ?」と思われるかもしれませんが、すみません自分も本当にそう思います。
☆超音速で書かれたデビュー曲、"Supersonic"。
デビュー前、各地でギグ(規模の小さいライブ)を重ねていたOasis一行。その日も夜にギグを控えたある日、リーダーのノエルは極度の酩酊状態で、後のデビュー曲を書き上げたそうです。
所要時間はなんと10分。
さっそくセットリスト(演奏曲目)に加えられないかとマネージャーに問い合わせたところ、
「お前な、こんな曲を書くために20年も下積みをしてるバンドが一体いくつあると思ってんだ」
という、褒め言葉なのか叱責なのかよくわからないリアクションを食らったとか。
"Supersonic"と銘打たれたこの曲は、アルバム発売前にデビューシングルとして発表されるまでに至りました。
さてさてここでライブ映像をみましょう。
ギラッギラですね。
このギラギラしたギターのキマり具合とベースやドラムのドゥルドゥルした激しいうねり(グルーヴと言います)は、後の彼らのアルバムではあまり見られない傾向です。
この雑然とした初期衝動は、ポップミュージックの一番面白い部分でもあります。
デビュー時の「瀬戸際」のような精神状態こそが、「成功した後」では到底再現できないような凄まじい作品を生み出すことがよくあるのです。
このデビューアルバム、Definitely Maybeはその代表格の一つであると言えるでしょう。セールスとしても累計1000万枚を突破しています。
しかし、Oasisが他のバンドと一線を隠していたのは最初から「自分たちは成功する」という確信があったことです。このSupersonicの歌い出しは、
「俺は俺自身である必要がある。他の誰にもなれやしないから」
というセンテンスから始まります。
そして、サビに入る直前のフレーズでは
「お前は自分の言い分をぶつける術を見つけなきゃいけない。明日になってしまう前に」
と言い放っています。
彼らはデビュー以降(前も)、いろいろな問題を起こしながらあっという間にスターダムにのし上がったことを考えると、この曲は極めて暗示的な性質があったのだなと思います。
この曲に関して、ノエル・ギャラガーはのちにこう述懐しています。
「この前ファンの女の子に『Supersonicを聴いて人生が変わった』って言ってもらえたんだけどさ。この曲書いてた時はめちゃくちゃ酔っ払ってたから全く記憶がなくて、特に深い意味とか無いんだよね…。いやなんか申し訳ないんだけど」
……まぁカッコいい曲に変わりはないんで、仔細はどうでも良いでしょう。曲が良くて最低限演奏できればいいんですよ。バンドなんて。
なんだったんだ今までの下りは…。
☆出るわ出るわの怪曲群
さて、このアルバムがどれぐらい凄いかというと、いわゆる「ライブの定番」とか「バンドの代名詞」みたいな曲がわんさか収録されていることです。少し代表的なものを紹介しましょう。
アルバムの冒頭に収録されている、タイトルが直球すぎるこの曲も例外ではありません。
"Rock'N'Roll Star"
この透き通って張りのある声質はメインボーカルのリアム・ギャラガーのもので、Oasisのシンボルでもあります。兄ノエルも「このボーカルには光るものがある」と言っていたほど。
サビのファルセット(裏声)が特徴的な曲。
ドラマーが埋葬されているこのPVはファンの間では語り草です。
"Slide Away"
リアムのボーカルが最も光る曲。
長尺の曲ですが全く間延びしないあたりがノエルの並外れた作曲センスを物語っています。アウトロ(曲の終わり際)が素敵。
"Sad Song"
日本版のボーナストラック。ノエルが弾き語るアコースティック・ソングです。リアムの青天井を突き抜けるような声質とは対照的な、粘りのある芯の太い声質が特徴的です。
☆総評
かれこれファンになって10年以上経ちますが、Oasisはいまだに自分の中で音楽を聴く際の「中心軸」となっているバンドであり、恐らくこれからもそうあり続けるバンドなんじゃないかなと思います。
このバンドはとにかく「曲が良い」バンドであり、ギャラガー兄弟二人の破天荒なキャラクター性も相まって今後色あせることなく新たなファンを生み出し続けるでしょう。
普段洋楽を聴かない方でもすんなり聴き入れられる度量のあるバンドだと思い、今回自分のニックネームを呼び水にして紹介させていただきました。
幸い、今はYoutubeで洋楽は好きなだけ漁れる時世です。一度趣味にしてしまえば非常にコスパの良い沼でもあります。もっとも、ハマるとその限りではありませんが。
この外出自粛の機会に、普段聴き慣れない音楽に触れてみるのも一興かもしれません。
余談になりますが実は自分、今はOasisよりも上述したノエルのソロプロジェクト、Noel Gallagher's High Flying Birdsの方が好きだったりします。
"Ballad Of The Mighty I"
上記で挙げた初期衝動はもう感じられませんが、長年作曲を手がけてきたノエルの才気がOasisとは異なる形で遺憾なく発揮されており、今では、自分は「Oasisのファン」というより「ノエルのファン」と自称する方がしっくりくるほどです。
「騒々しい音楽が苦手」という方は、こちらから攻めてみても良いでしょう。
ハクメイとミコチ/作品レビュー
緊急事態宣言が出てはや3週間、皆様いかがお過ごしでしょうか。
外出自粛の緊張や慣れない在宅ワークでのストレスも高まり、「家にいるのに落ち着かない」といった心地になってる方々も多いと思われます。
未曾有のこの事態。家で上手に一人遊びするにも根気が入りますよね。
自分もそろそろ「ラーメン食いに行きてぇなぁ」などと思い始めた次第です。
行きませんけど。
さてさて様々な情報がより一層錯綜するこの頃。無軌道な情報は追ってるだけで疲れるものです。特に一個人の手に余るようなものは。
手洗いうがいをしっかり行って、「良いもの」「楽しいもの」に意識的に触れることが重要かと思われます。
というわけで、今回は私のレビュー記事作成の練習も兼ね、「ハルタ」で連載中の、樫木祐人(たくと)氏による「生活系小人漫画」、"ハクメイとミコチ"をご紹介したいと思います。
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_EB06000006010000_68/
コミックウォーカー/ハクメイとミコチ 1話試し読み
右クリック、スマホなら画面押し込みで別タブにて開いてくださると確実かと思われます。
……著作権の如何が分からないので文字による紹介だけになります。あしからず。
代わりにうちの犬でも載せておきます←???
○作品情報
作品名:ハクメイとミコチ
原作者:樫木祐人
掲載誌:ハルタ
単行本:既刊8巻
対象年齢:全年齢(ただし少し大人向けの情緒あり)
アニメ化しており、Amazonプライムで全話視聴できます。
○作品概要
全長9cmの小人たちと小動物たちが織りなす小さな、しかし極めて丁寧な生活系小人漫画です。
縮尺を生かしたアイデアに加えて抜群のデザインセンス、そしてそれらだけに依存しない瀟洒な叙述表現による登場人物たちの「心の通い合い」が見所です。
活発でアウトドア派、明朗快活な「ハクメイ」と、家庭的で芯が強く、しかし好奇心旺盛な「ミコチ」。
この二人の小人の暖かな同棲生活を軸にお話が展開されます。
以下レビュー。
☆足元の幸せ
まずこの作品を紹介した理由ですが、「殺伐とした表現がない」ことです。今の情勢に紹介するにはぴったりかなと。
その一方で、鼻につくようなあざとい場面もありません。毎日を楽しく、ひたむきに生きる小人や小動物たちの姿が非常に細かく描かれており、読むだけで幸せになれる素晴らしい作品です。
絵が非常に細密かつ見やすく、また小人たちや小動物たちの衣服や装束等の造形にはきちんとした設計と意味があり、下手をすると間延びしてしまう「日常もの」でありながらも程よい「引き締め」を感じることができます。
さながら、逸品物の精妙な工芸細工を弄んでいるような感覚があるほどです。
舞台設計も見事で、メインの舞台となるハクメイとミコチが暮らす街「マキナタ」は、中世〜近代ヨーロッパとケルティックが融合したような親しみやすい意匠です。
また、たまに舞台になるミコチ行きつけの「アラビ」は「積み木」と形容される高層で過密な建築様式が特徴の港町であり、和風で雑然とした独特の風情があります。
ちなみにこのアラビは私のお気に入りです。
何よりもこれらを描きだす樫木先生の画力は卓越したものがあり、「絵を見ているだけで楽しい作品」でもあります。自然画に関してはそのまま額に入れて飾れるのではないかと思うほど。
上にリンクを貼った1話の時点ですでに絵柄はほぼ完成されているのですが、現在はさらに磨きがかかっています。
☆魅力的なキャラたちと「きれいな」お話
さてさて上記までは設定や絵柄に関して言及してきましたが、これに限らず作品の肝はなんと言っても「物語」。このハクメイとミコチは、お話の部分も非常に凝った作りになっています。
基本的に1話完結であり、一回読み通せばあとはどこからでも読み返せるという手軽さも、この作品の魅力の一つです。
主人公のハクメイとミコチは各々修理屋と加工食品の製造と卸しで生計を立てており、それを軸にしたエピソードが中心です。
そこに、吟遊詩人で少しズボラな「コンジュ」だったり、動物の骨を特殊な技術で動かすアヤしい研究をしている「セン」、また、大工の親方でハクメイの直属の上司であるイタチの「イワシ谷」が絡んでくるわけですが、マキナタやアラビ特有の文化や催しをモチーフにしたものもあり、読み応えは抜群です。
上三人の他にもたくさんの登場人物が出てくるのですが、「クセはあっても嫌味な奴は一人もいない」ことが作中一貫しています。
つまり、読んでて「うわコイツ嫌いだなぁ…」とならないのが、この作品における一番の美点でもあります。
たとえば、上記のイワシ谷(通称イワシ)。彼は非常に仕事熱心な一方で面倒見がよく、ハクメイが窮地に陥ったときには体を張って救出する漢気溢れる一面を見せてくれます。また、別のエピソードでは極度の出不精が発覚し、ハクメイとミコチに(半ば無理やり)連れられて街で遊んだ後、二人と共に笑顔で飲んだくれるというまた違った表情を見せてくれます。
こんな感じでキャラ一人に対して多角的なアプローチでエピソードが作られており、読めば読むほどキャラが魅力を発揮していく作りになっています。
☆彼らを繋ぐは食と酒
さて、ハクミコを語る上で欠かせないのが食事のシーン。主役の一人であるミコチの特技の一つに料理があり、その腕前は「アラビに買い出しに行った際、飲食店を営む人々が監修してもらうために列をなす」ほどの腕前だったりします。
ハクメイが彼女と同棲しているのも胃袋を掴まれたのがきっかけだとか。
この作品は酒宴でエピソードが締め括られることが多くあり、そこでは数々の垂涎もの料理が振る舞われます。上記で大人向けの情緒ありと書いたのはこのためです。
それらはどれもが非常に美味しそうで、例えば「キノコのオイル煮とミントジュレップ」だったり「屋台向け木苺のジャムと無発酵パン」だったり「サバと冬瓜の揚げ浸し」だったりするわけです。
ここでポイントなのが、これらはファンタジー世界でのみ再現可能なものではなく、全て実際に「作って食べられる」、または「類似したものが手に入る」リアリティにあります。
この食の描写に関しては、作者の樫木先生が料理を趣味としているところが大きいのでしょう。
巻末にて「原稿作業の息抜きがてら料理する」とお話ししているほどなので、おそらく漫画と同様、料理に関しても相当な凝り性であられるのだと思われます。漫画も料理も出来るってスゲェなマジで。
また料理以外でも、大工仕事の描写が非常に凝っていたり、湖畔で釣りをするエピソードでは釣りやその道具に関する蘊蓄があったり、最近では煙管(きせる)へのこだわりを描いたエピソード(個人的に大好きな話)が出てきたりなど、節々にフェティシズム、趣味の良さを感じさせる要素が多く見られます。
☆総評と追伸
高い画力に適度な情報量、節々への確かなこだわり、そして心地よい読後感と、誰が読んでも嫌味を感じない、それでいてチープな感触が全くない傑作です。
掲載誌の都合上、単行本が刊行されるのは毎年一回ですが、待つ価値は十二分にあります。
また、この作品はアニメ化されており、Amazonプライムで全話視聴が可能です。
このアニメ化は手本のようなクオリティであり、原作をすでに読んでいた自分も初めて見たときは「これ以上理想の形は無い」と強く思ったほどです。原作で独立している2話分のエピソードが巧みに一本にまとめ上げられていたり、やはり強いこだわりと原作愛を持って作られたのだなと確信できます。
サブスクリプションを保有している方は是非一度、ご覧になってほしいです。
ながながと描いてしまいましたが、すこし逼迫した今日この頃、枕元に置いておくには最適の作品であると思うので、是非一度ご照覧下さいませ。
はじめまして。または、いつもお世話になっております。
はじめまして皆様。Supersonicです。 Twitterではお世話になっております。この度新たにブログを開設いたしました。理由としては……あ、俺今かなりどうでもいいこと言おうとしてるな…。
というわけで、まぁやりたいからやり始めたわけです。それ以上のことはない。
……余談ですが日記を書くってメンタル面のデトックスになるらしいです。自分の中にあるゴチャゴチャしたものを文章にする事で整理がつくからだとか。
更新は気が向いた時にします。このまま面倒になってお蔵入りする可能性もあるので、その際は指差して笑ってやってください。
あ、タイトルのLittle Stepsに特に意味はありません。猫※がちょこちょこ歩いてるのをみて付けました。それだけです。
それでは。
※猫